年齢とともに筋力やバランス感覚が落ちてくると、「転んだらどうしよう」という不安から外出や家の中の移動が減りがちになります。歩行器は、そんな不安を和らげて、安全に歩き続けるための心強いパートナーです。
ただし、歩行器なら何でも良いわけではなく、身体の状態や使う場所に合っていないものを選ぶと、かえって転倒リスクが高くなることもあります。この記事では、初めて歩行器を検討する方にも分かりやすいように、種類と選び方のポイントを整理してお伝えします。
まず確認したい「身体の状態」と「目的」
歩行器選びで一番大事なのは、「どんな身体の状態で、何のために使うのか」を整理することです。
- 歩行能力・ふらつきの程度
どれくらいの距離を、どのくらいのスピードで歩けるのか、ふらつきはどれくらいあるのかを確認します。 - 上肢の力と痛みの有無
歩行器は腕で支える部分もあるため、肩・肘・手首・指に痛みがあるか、握力はどれくらいかが重要です。 - 利用目的・使う場面
主にリハビリ目的の屋内使用なのか、買い物や散歩など屋外も含めた移動のためなのかで、選ぶタイプが変わります。
歩行器の主な種類と特徴
歩行補助具は大きく「歩行器」と「歩行車(四輪歩行車)」に分けられます。それぞれに特徴があり、合う人・場面が異なります。
- 固定型歩行器
四脚が常に床に接していて、持ち上げて前に出しながら使うタイプです。安定性が高く、リハビリや屋内の段差の少ない場所でよく使われます。 - 交互型(交互式)歩行器
左右の脚を交互に前へ出せる構造で、歩くリズムに合わせやすいタイプです。バランスはやや必要ですが、足取りに合わせた自然な動きがしやすくなります。 - キャスター付き歩行器
前脚にキャスター(車輪)がついており、持ち上げずに押し出しながら使えるタイプです。腕の力が弱い方にも向きますが、スピードが出すぎないようブレーキや使う環境に注意が必要です。 - 四輪歩行車(シルバーカーに近いタイプ)
ブレーキや座面、買い物かごなどがついた、屋外向けのタイプです。ある程度歩けるけれど、長い距離や坂道・段差が不安な方に使われます。
身体に合ったサイズ・高さのチェック
同じ種類の歩行器でも、「サイズが合っているか」「握りやすいか」で安全性が大きく変わります。
- ハンドルの高さ
立位姿勢で、肩の力を抜いて腕を自然におろしたときの手首の高さを目安に調整すると、腰が曲がりすぎず前かがみになりにくいとされています。 - 横幅・奥行き
自宅の廊下やトイレ、玄関などを通れる幅かどうか、方向転換がしやすいかを確認します。廊下が狭い場合は、幅を調整できるタイプが役立つこともあります。 - 重さ
固定型や交互型では、持ち上げられる重さかどうかが大きなポイントです。重すぎると、足元がついていかずに転倒リスクが高まります。
使う場所・生活環境に合わせる
歩行器を「どこで」使うかによって、向いているタイプが変わります。
- 主に屋内で使う場合
段差が少ない環境では、固定型・交互型・キャスター付き歩行器が使われることが多いです。病院や施設のリハビリでもよく見かける組み合わせです。 - 屋外や買い物にも使いたい場合
坂道や小さな段差がある場面では、ブレーキ付きの四輪歩行車や、抑速ブレーキ付きのタイプが安心です。荷物を運べるかごや座面があると、途中で休憩もしやすくなります。 - 段差・玄関・トイレまわり
自宅に段差が多い場合、あえて持ち上げる固定型を選んだ方が安全になるケースもあります。環境によっては、手すりと歩行器を組み合わせる検討も大切です。
安全に使うための機能・チェックポイント
「安全に止まれる」「持ち替えやすい」といった機能は、転倒予防に直結します。
- ブレーキの種類と操作しやすさ
ハンドルを握ると効くタイプ、レバーを下ろして駐車ブレーキにするタイプなどがあります。握力や手指の痛みを考慮しながら、「片手でも操作できるか」もチェックしたいポイントです。 - 抑速ブレーキ・電動アシスト
下り坂などでスピードが出やすい方には、一定以上スピードが出ないよう制御する抑速ブレーキ付きが選択肢になります。最近は電動アシスト付きの製品もあり、坂道が多い地域で活用され始めています。 - 折りたたみ機能・収納性
車に積んだり、室内で置き場所を小さくしたりしたい場合は、折りたためるか・どれくらいの力で折りたためるかも確認します。
歩行器と歩行車の違いを整理
| 項目 | 歩行器(固定・交互・キャスター付き) | 四輪歩行車 |
|---|---|---|
| 主な利用シーン | 室内・リハビリ向き | 屋外・買い物・散歩向き |
| 安定性 | 四脚が支えるので高い | ブレーキ操作が前提の安定性 |
| 操作方法 | 持ち上げる・押し出すなど上肢の力を使う | カートのように押して歩く |
| 主な機能 | 高さ調整・一部折りたたみ機能など | ブレーキ・座面・かご・抑速機能など |
| 向いている方 | 歩行訓練中の方、屋内中心の方 | ある程度歩けて外出もしたい方 |
介護保険レンタルと専門職への相談
在宅介護の場合、多くの歩行器・歩行車は介護保険でレンタルでき、状態の変化に合わせて機種変更しやすいのが大きなメリットです。
- ケアマネジャー・福祉用具専門相談員・リハビリ職への相談
本人や家族だけで判断せず、身体機能や生活環境を評価したうえで、一緒に選んでもらうことが勧められています。 - 必ず「実際に試す」時間をとる
カタログ上の機能だけでなく、試しに歩いてみたときの安定感・疲れやすさ・曲がりやすさなどを、本人の感覚も含めて確認することが大切です。
おわりに:不安を減らして、「また歩いてみよう」につなげる
歩行器は、「もう歩けないから使うもの」ではなく、「不安を減らして、まだ歩ける時間を少しでも長くするための道具」です。身体の状態・使う場所・安全機能を一つずつ確認しながら、その人にとって「怖くない」「使いやすい」一台を、専門職と一緒に探していくことが転倒予防と自立支援につながります。



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